(ゆ・-・)っ旦~ まぁお茶でも > 夢 > リフト
2006/12/27 - 2009/02/20
2005/01/12の夢より
「たまには外のいい空気を吸いに行こう」
などという声があがり、高校のPC部の四人で山に登りに行くことになった。
山に登るといっても体力の無い我々のこと、当然ロープウェイを利用する。
ロープウェイを降りると山の冷たく湿った空気が心地良い。
標高があまり高くないので周りは針葉樹林。
崖になってる辺りからの眺めはいい感じだ。
廃人コンビがそこらの店でソフトクリームを食うと言って列に並ぶ。
俺と相棒は待ち時間を嫌いふらふら歩き回る。
奥のほうは深い森。
カブトムシでも探して捕って売れば儲かるんではなかろうか。
などと考えるだけで実行しないのが俺の常。
「なあ、あれあいつらじゃね?」
・・・確かに、森の奥へ向かう小道の途中の人影はそんな感じだ。
「何か面白いものでもあるのか?」
声を掛けながら近付く。
「このへんでかいカブトムシとかいそうだろ?」
「捕って売ればかなり儲かると思うんだよね。」
なにこのシンクロ率、ふざけてるの?
「お前らに見つけて捕って運んで飼って売るだけのスキルがあるのかと問いたい。問い詰めたい。小一時間・・・」
「奥に何かありそうだぜ。」
「ああ、行ってみるか。」
「え?カブトムシは?」
「過去に固執するなよ。」
・・・。
「そういやソフトクリームはどうしたんだ?」
「VIPPERは飽きっぽいんだぜ?」
こいつら・・・「途中まで並んでいた」にもかかわらず「飽きた」という理由だけで「列から離れた」というのかッ!
「そう、じゃあ行こうか。」
いちいち突っ込んでいては身がもたない。
少し進むと視界が開けた。
木の生えていない斜面、そこを登るリフト。
「どう見てもスキー場です。本当にありがとうございました。」
「シーズンオフだしこんな過疎ってるのに動いてるのか。」
過疎ってるといっても疎らには人もいる。
なんか霧でもかかってるような感じだけど。
何だろう。
廃人のVIPPERがリフトへ向かって歩き出す。
「乗るのか。」
「待て何か妙な雰囲気じゃないか?」
「全力で釣られるのがVIPPERなんだぜ?」
「せっかくここまで来たんだから乗らなきゃね。」
廃人コンビはさっさと乗りに行ってしまった。
相棒も乗りたそうだ。
「俺らも行くか。」
「ああ。」
リフトは一人乗り。
先に俺が乗り、相棒が続く。
数秒前に出た廃人コンビはもう見えない。
そんなに間隔開いてたんだな。
などと思ってるうちにもうすぐ着くのようだ。
上のリフト乗り場には人影が見える。
ちゃんと人いるんじゃないか。
リフトから降りると大学生くらい?の男女が駆け寄ってきた。
俺が降りたリフトに男のほうが乗り、相棒が乗ってきたほうに女が乗った。
「降りろ!よこせ!」
「だめ!これは私の!」
「待て!馬鹿!それじゃ無理だ!」
「あ!待って!」
「知ったことか!俺は帰るんだ!」
もう一人現れた男が女を押しのけてリフトに乗り、上のほうから別の声がした?
ダダダダダ・・・
銃声?マシンガン?まさか?
「うっ!」
「ぐわー!」
リフトに乗って行った男二人は血にまみれ、リフトから落ちた。
「クソッ!」
「あああああ・・・。」
「何だよ・・・これ・・・。」
「君達も・・・ああなりたくなかったらここから帰ろうと思わないほうがいい。」
さっき止めようとしてたおっさんか。
そして立ち尽くす相棒とうずくまる女。
「何?何なの?おっさん。」
「見ての通り、ここから降りようとすると撃たれるんだ。歩いてでも、リフトに乗っていようとも。」
「何故?誰に何の目的で?」
「わからない。ただ、そこの小屋ではどこからか全員分の食事が出てくるし生活には困らな・・・」
「だから何だって言うの?こんなとこから帰れないんだったら死んだほうがマシじゃない?」
「・・・本当にそう思うんなら、その斜面を下ればいい・・・。」
「うわあああああああああ・・・」
女は走って行ってしまった。
もちろん、上の小屋に向かって。
「なあ、本当だと思うか?こんなこと。」
「思うかって実際に・・・」
斜面を見ると死体が消えている。
「え?おい!さっきの撃たれた死体は?」
「ああ、死体は皆が目を離すと消えてしまうんだ。そうでなければ斜面は死体だらけだよ。」
「胡散臭い・・・。」
「私にいろいろ教えてくれた先輩達もいつのまにか消えてしまった。耐えられなくなって撃たれに行ったんだろうね。」
「・・・。」
相棒は黙り込んで何かを考えているようだ。
俺もだいぶ落ち着いてきた。
と同時に忘れていたものを思い出した。
「俺達の前に同じくらいの年の男二人が来ませんでしたか?」
「ああ・・・いや、たぶん来てないと思う。」
「何だよその言い方。」
「君達がそれについてきてリフトに乗ってしまったなら、それはおそらく罠だ。」
「は?」
「人を誘き出すための幻。私の場合それは妻だった。」
「幻・・・じゃあもしや・・・でもしかし・・・」
何を考えてるか聞きたいところだが考えの邪魔をするのはよそう。
「今ここには何人いるんです?」
「君達も含めて四人だけだ。」
おっさんと、女と、俺と、相棒か。
「じゃあこれまではあの激しい二人もいた中で女一人?」
「ああ、うん。そう、帰ろうとしなくても相当に秩序を乱す行動をしたら撃たれるんだ。彼女を襲おうとした男も撃たれたし、ずっと前に全員を巻き込んだ無理心中をしようとしたのがいて、それも撃たれたらしい。」
「もういい!信じない!俺は帰る!」
「おい待てよ。」
「非科学的すぎるんだよ!食事が出てくる?何かすると撃たれる?死体が消える?こんなもん現実じゃねぇ!」
「落ち着きなさい。」
「現実じゃないから死んでもなんともない。むしろ死んだら現実に戻れるんじゃね?俺は帰るぜー!」
相棒は斜面を走り降り、そして、撃たれて、死んだ。
「・・・。」
「・・・。」
それからの日々は退屈なものだった。
当然PCはいじれないし、女は話し掛けても答えないし、おっさんとは話題が合わない。
銀河鉄道999で時間を食べるテストってのがあったが、それもこんな感じなのだろうか。
幸い俺は、退屈は嫌いだがそれほど苦痛なものとも思わない。
死にたくなればいつでも死ねるのだからと、だらだらと生きてみることにした。
たまに面子が増えたが皆似たようなものだった。
相棒のように死ぬ者もいれば、留まる者もいた。
いつのまにかおっさんもいなくなり、俺が説明係になった。
その頃には風に当たり、空と森を眺めて、何か考えることもなく日々を過ごすようになっていた。
ある日、誰も上ってきていないのに下っていくリフトを見た。
それを追いかけて女が走り、死んだ。
不思議には思ったが、理由を考える気にはならなかった。
そしてまた別の日のこと。
ピンポンパンポ〜ン
「某M高校PC部の皆様、お帰りの準備ができましたのでリフト乗り場にお越しください。」
ピンポンパンポ〜ン
なにここ放送設備なんかあったの?
などと思いながらリフト乗り場へ向かった。
ちょうどリフトが下りに向きを変えたところだった。
それに乗り、下った。
撃たれることなく、下に着いた。
そこには、相棒がいた。
「おう、お前も結局撃たれたのか。やっぱ思った通り、死んだと思ったらここで寝てたんだぜ?」
「・・・。」
いろいろ話しながら、小道を戻った。
廃人コンビがソフトクリームを食べながら森を眺めていた。
「森の中に入ってたのか?でかいカブトムシとかいなかった?」
「捕って売ればかなり儲かると思うんだよね。」
「・・・。」
「・・・。」
いろいろ話しながら、ロープウェイで戻った。
あの場所は、不自由ながらドラゴンボールの精神と時の部屋のような効果があるようだ。
その後、思いつくだけのボードゲームを持って皆で行こうとしたが、森の小道は見つからなかった。
せっかく重い麻雀牌まで持ってきたのに。
でもまあ、帰る時を逃すと撃たれなきゃ帰れなくなってしまうからよかったのかな。
というお話だったのさ。
「〜山で男子高校生二人が行方不明となりました。調べによると、今日昼ごろ、同じ高校の部活に所属する四人で山に登ったところ、この二人は他の二人が買い物をしている間にいなくなったということです。警察では、二人が何らかの事件に巻き込まれた可能性があるとみて捜査を進めています。行方不明となったのは〜」
「〜三日前から行方不明となっていた二人の男子高校生が、昨夜、白骨死体となって発見されました。発見された場所は行方不明になった場所から少し離れた森の中で、目立った外傷は無く、衣服もそのままの状態で放置されていたということです。死因など、詳しいことについてはまだ分かっていません。専門家によると、白骨化にはこの時期でも一週間ほど〜」
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